【宮廷画家の仕事・立場】アルチンボルド展の、もう一つの楽しみ方(アルスラーン戦記が好きな方にも)

展覧会のキャッチコピーに「奇想の宮廷画家」とある通り、アルチンボルドは、16世紀のハプスブルク家に仕えた宮廷画家(宮廷芸術家)でした。

宮廷画家は例えばどんな仕事をしたのか? 宮廷でどのように過ごしていたのか? という事が、アルチンボルド展を通して見えてきます。
肖像画や、宮殿の壁画を描いてた、程度のイメージでしたがとんでもないです。条件さえ合えば、はるかに広くて深い仕事ができる職業だったのです。

前の記事↓でも書きましたが、良い上司に恵まれる幸せ、みたいなのも感じることができました。

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宮廷画家:アルチンボルドの場合

★皇帝・皇族の肖像画はもちろん描きます。
アルチンボルド作と思われる肖像画が数点、会場に来ています。

★皇族以外の肖像画や、頼まれた絵も描きます。
たとえば会場に来ている職業絵は、頼まれたのかは分からないけど、皇族以外を模したものです。面白い! 似てる! と当時も話題になったらしいです。
また、四季・四大元素は、皇帝に献上した以外にも、有力者に「自分にも!」と乞われて描いたようなバージョンがあります。この中から会場に来ているものもあります。

★宮中の催し物をプロデュースします。
現代でいう美術監督のような立場で、皇族の結婚式などを演出したそうです。
多くは残っていませんが、衣装デザインのスケッチ画が、まとまった枚数展示されています。

★皇帝の動物園・植物園やコレクションを、好きなようにスケッチすることが許されています。
世界中の珍奇なものを集めるのが、「世界を手中に収める」という意味を込めて、当時の有力者のステータスだったようです。それを自由に見て描いて良い、と許されるあたり、皇帝からよほど信頼されていたのが分かります。
このスケッチが精密なもんだから、博物学や自然科学の学者に見初められて提供することもあったそうです。(本の挿絵とかにする)
そんなわけで、宮廷「画家」とは言いますが、「学者」としての側面さえあります。
 

ユーモアや珍しいものを寛大に受け入れ楽しむ宮廷文化や、積み重ねた素描・スケッチの集大成が、四大元素や四季になった。というのがじわじわ伝わってきます。

作品を通して、いかに皇帝を讃えるか

普通の肖像画なら、持ち物や描き込む物で、わりと分かりやすく表現できそうです。
人物自体も、血色良く、デキル人っぽく、多少の脚色もするでしょう。
 

で、寄せ絵の場合はどうするか。
 

皇帝や王家を示すものを描き込む、これは普通の肖像画と同じ発想です。
たとえば「冬」および対になる「水」を、特に皇帝本人に見立てて、冠をイメージするトゲトゲを載せたり、Mの字(献上相手の神聖ローマ皇帝・マクシミリアン2世を示す)を描き込んだりしています。
「火」では、皇帝の軍隊を示す鉄砲や大砲に加え、ハプスブルク家当主を示す、金羊毛騎士団の勲章が描かれています。

また、四大元素(地・水・火・風)は、世界を構成する基礎と考えられていました。
一方、四季(春・夏・秋・冬)は、時間およびその繰り返しを表します。
二つの連作を合わせて、世界の時間空間に君臨する皇帝陛下、といって讃えているのです。
この、込められた意味を理解できるのが、当時の最高階級! というわけです。

それぞれの絵の、構成する植物・果実の色ツヤが鮮やかなのは、豊かな国を。動物たちがキリッと良い顔をしているのは、皇帝の高潔な内面、あるいは皇帝を慕う庶民の感情、を表しているようにも思えます。

知れば知るほど面白い、しかも宗教より取っ付きやすくて楽しいです。
書ききれないので、興味をそそられたらぜひ会場へ行ってみてください!

公式サイト アルチンボルド展
 

アルチンボルドが、いかに皇帝と良い関係を築いていたかは、この本が読みやすくて良いです。当記事で参考にさせていただきました。
会場(国立西洋美術館)の、常設ブックショップでも買えます。

↑作品が網羅されてるわけではないですが、軽い作品集としても楽しめます。安いですし。
巻末の参考文献に、一言ずつ紹介が書いてあるのも、地味にポイント高いです。

 

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宮廷画家:あの人の場合(妄想)

宮廷画家という単語で、うっかり思い出す御仁がいます。

今回展覧会へ行く直前に、アルスラーン戦記(荒川版マンガ)をたまたま読み返したのでなおさらでした。好きな方なら分かりますよね。軍師としての側面が大きすぎるあの人。

個人的には、いろんな人がのぞき込んではカタマっているあの手元には、ピカソみたいな絵が描いてあるに違いない・・・! と思っていますが。

絵心がひどいと言われてはいますが、ナルサスみたいな才能あふれかえって止まらない系が、絵だってできないはずがない、とも思うのです。(←想像を前提に話を進める)
 

ピカソだって、普通の絵が描けた上で、飽きたらずにキュビズムを生み出したといいますし。
アルチンボルドも、基礎ががっちり出来て(それこそ科学者にも頼られるほど)、その上で、才能を持て余して爆発したのが寄せ絵って方向だったのかなと。

そう考えると、ナルサスだって宮廷画家として好きにやっていい場を与えられたら、大衆にも分かりやすい芸術活動をしつつ、余ったエネルギーで目が点になるような何かも生み出して行くんじゃないか、と想像しちゃうのです。
彼もアルスラーン大好きなはずだから、その顔に泥を塗るような作品ばかりは作らないだろう、とも思います。うまく讃えるような分かりやすい絵はいくらでも描けるんじゃないかと。やろうと思えば。
 

と、いった調子で、ナルサスが寄せ絵で身近な人の肖像とか描いて「すごいけど・・・なんじゃこりゃ」みたいな反応されるのを思い浮かべ、会場でにやけそうになっていました。(←怪しい人である)

ハプスブルク全盛の平和な神聖ローマ帝国と、戦乱が終わったばかりのパルス王国との、人々の精神的余裕の差もあるかもしれません。天才の発想についていけるかどうかが。
(あとは時代的なものも。アルスラーン戦記の世界のモデルは、少なくとも16世紀よりはだいぶ前なので(詳しくは忘れた)、そこにアルチンボルドとかピカソみたいなのが出てきても、時代が付いていけないというか)
 
 

アルスラーン戦記(原作)第二部のはしりでは、のんびり下手な絵を描いてます的な描写をされてた気もしますし、その後の展開についての噂も多少聞きますが・・・
私は第二部は、冒頭をむかーし読んだ記憶で止まっているので(角川文庫版)、荒川版を読み進めてる人の感覚で妄想してみました。

こんなナルサスもあるかもね、ということでご笑納ください。
 

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