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絵画や美術展の「攻め」の楽しみ方。背景を知る/知らないなら妄想しまくる

以前のアルチンボルド展で、だいぶ悟りかけてはいたんですが、今回「怖い絵展」とその関連本からはっきり思ったので、書いておこうと思います。

絵は、見て楽しむだけじゃない。

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背景を知っているという事~身近にある「怖い絵」

たとえば、原爆ドームの絵だけで色々連想する、とか。
可愛らしい少女マンガにしか見えない表紙でも、内容がガチのホラーと知ってる人は身震いする、とか。
身近にも、知っていると見え方が違うって絵は、色々あると思います。

「怖い」を「想像が広がる」と言い換えると、もっと分かりやすいかもしれません。
ハマった映画やドラマの宣伝ポスター、見るだけで色んな場面をバーッと思い出しませんか?
あるいはスポーツ選手の写真なんて、見るだけで競技中の姿や、インタビューを受けている姿が目に浮かぶと思います。

知っていることで、絵や写真から、映像や音声まで想像できるのです。

絵画も同じ

展覧会の絵も同じで、背景の神話や歴史などを知っていると、見るだけで色々な情景・感情が押し寄せてくるし、想像も更に膨らみます。
だから、背景を自分なりに知った上で見に行くっていうのが、美術展の楽しみ方として最上なんだろうと思います。
 

「怖い絵」展の場合は、押し寄せてくるものの色が、様々な「恐怖」で揃えてあります。
目玉は「レディ・ジェーン・グレイの処刑」で、背景は権力や政治・宗教対立ですが、そんなのより神話や悪魔に言い知れない怖さを感じる人もいるだろうし、ひょいと身近に現れるかもしれない殺人者に背筋を寒くする人もいるでしょう。
人それぞれで良いのです。

アルチンボルドの寄せ絵の場合は、皇帝コレクションの宣伝を通して、皇帝の権威を分かりやすい形で世に知らしめる、という役割がありました。博物学の発展も背景にあり、そう知ると絵が違って見えてくると思います。

前半のまとめ

少しでも予習をしてから展覧会に行くと、倍以上楽しめます! (一行で済んだ)
 

解説パネルの情報量は限られているし、人が多いとなかなか近寄れなかったり、ってこともあります。入場待ちに並びながら、公式ホームページの説明書きを読むだけでも違うと思います。
生の絵が持つ力は相当なものなので、ホームページとかで見たからって、会場で「つまらない・・・」なんてことは決してないと思います。そんなわけで、ネタバレ上等! と私は思います。

一枚でも二枚でも、これはと思う絵と出会えたら良いですね。
いつかどこかの美術館・展覧会で再会した時に、これ知ってる! この綺麗さが怖いんだよ! とか一瞬で思い出せたら、来た甲斐があるってものです。
 

西洋美術のとっかかりとしては、この本がオススメです。
「西洋美術は聖書や神話の挿絵です」って切り口で紹介しており、「怖い絵」展と視点が近い感じです。

あらぬ方向へ想像を広げるのもありなんだなって話

ここからは、背景知らなくても妄想しちゃえ! という考えです。

中野京子作「怖い絵 泣く女篇」より、そんなの有りかよって思った解説を数点紹介します。

ミレーの「晩鐘」について、ダリのとんでも解釈

「落穂拾い」でも有名なミレーが描いた「晩鐘」は、農作業の終わった夕暮れ時、遠くの教会から響いてくる鐘の音を聞きながら、若い夫婦が頭を垂れて祈りをささげています。静謐で敬虔な画面です。

サルバドール・ダリは、あれですね、時計がグネグネしてたりするすごい絵の人。(苦手)
本文中では「奇行のシュルレアリスト」とも言われていますが。
 

ダリの生家には、当時から有名だった「晩鐘」の、写しが飾ってあったそうです。
ダリはそれを見て、幼いころから想像を膨らませていたそうで。

女の足元にある籠、最初は彼らの子供を入れた棺が描かれていたのではないか。これは亡き子を土に埋めた後の、祈りと嘆きの時間ではないか。
あるいは、女の姿勢は「拝み虫」の別名を持つカマキリが攻撃直前のものと同じである。男は彼女の息子で、今まさに飛び掛かられ食われようとしている・・・とか。
描き込まれた鋤や手押し車など、あらゆる要素について、それはもう想像をたくましくしていたようです。
で、そんな想像を元に、山ほど作品を生み出したそうです。
自分で偏執的と言っていたそうですが。

考えすぎだろ! と思う一方、絵の見方は本当に自由だし、そこから新たな力が生まれることもあるんだな、と感心もしました。

ブリューゲル「ベツレヘムの嬰児虐殺」が大幅に書き換えられている件

この絵、遠目には、青空の下での群像劇です。
兵士が、動物や袋や壺を、農民から奪おうとしたり、槍でつつき回したりしています。
農民は、怯え、懇願し、あるいは泣き叫びながら兵士と対峙しています。

袋や壺がそれほどのものとは思えないしで、何が起きているのかサッパリ分からない・・・と思ったら、実は乳幼児を、袋や壺に描き直してしまっているんだとか。
空も元々は青くなくて、禍々しい色をしていたと。
 

この絵の場合は、コピーがたくさん作られていたために、元の姿が分かったという事ですが。
絵によってはコピーも存在しなくて、関連する情報から想像をたくましくするか、あるいはエックス線調査などに頼らないと本当の姿が見えない、という場合もあります。
ひねくれた解釈をしないと真実にたどり着けないのです。
だから、ダリほどではなくても、想像をたくましくするのは悪い話じゃないのだろう、と思います。

ビアズリー「サロメ」の元ネタの拡大解釈

元となっているのは、新約聖書の、ヨハネ殉教のエピソードだそうです。
ヘロデ王が、妻・ヘロディアスの連れ子(若い娘)に踊りを踊らせ、見事だったので褒美を取らせるといった。
娘は、母ヘロディアスに相談し、ヨハネの首を望めと言われて、その通りにした。
という話。
ここではサロメという名前は出てきません。悪女はヘロディアス。

その後、ユダヤ古代誌で、娘に「サロメ」の名が付きましたが、この時も踊るだけの娘で、影は薄いとのこと。
 

このエピソードは、古くから絵画の題材に用いられてきて、時代によって描かれ方が変わっていったそうです。

最初は、ヨハネ殉教のシーンと首を受け渡す母子がよく描かれました。
そのうち踊る娘を主題にした絵が増えました。
さらに「娘と首」の組み合わせで描かれるようになり、いつしかサロメが自らヨハネの首を所望したかのように言われるようになった、と。
ここから膨らませて戯曲を作ったのがオスカー・ワイルド、その挿絵を描いたのがビアズリーです。

敢えて解釈・表現を変えたら、秀逸な派生作がたくさん出来た、という感じです。

後半のまとめ

そんなわけなので! どんな妄想でもいいので、楽しんだ者勝ち、と思いました。
歴史さえ勝者によって書き替えられるんだから、正解なんてありません。(飛躍)

大抵妄想で終わるとは思いますが、中には後世に残る仕事の種になる発想だってあるかもしれません。

 
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