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古代アンデス文明展2017-2019の感想です【土器、キープ、死生観、外科手術・・・】【鹿児島9/16まで】

インカ帝国が有名な、古代アンデス文明。
教科書でマチュピチュとかキープとか見て以来、ずっと興味を持っています。

時々展覧会などに行っては、「おお!」って思って、次の機会までに7~8割忘れて・・・みたいに繰り返してましたが、今回は予習も含め、どっぷり浸ることができました。(行ってきたのは東京会場です)

私たちが普段暮らしているのとは異質な文化でありつつ、根源は日本と似てるかも、とも思いました。
いつも使わない頭を使った気分です。

読み物(上野会場公式)
古代アンデス文明展
古代アンデス文明展特別企画 アンデスってなんです?

古代アンデス文明展チケット

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アンデス文明の気になるところ

個人的な興味ポイントが三つあります。
このへんを頭の隅に置きつつ、見て回りました。

死生観と生贄文化

エジプトとはまた違う、ミイラさん文化があります。
乾いた土地なので放っておいてもミイラ化する、という状況ではあるそうです。
それにしたって、ミイラと一緒に暮らしていたとか、一体どういう感覚なのか。

生贄は、わりと日常的に儀式として行われていたようなイメージを持っています。(なんか誤解してるかもしれません)
生贄を手に入れるために戦争までするってどういうこと。

文字がない

これが興味が尽きない根源かもしれません。
キープが気になって気になって。

開頭手術

頭部の外科手術が行われていた、というのが驚異だと思うのです。
しかも時代が進むと、けっこう生存率が高かったそうです。




会場を見ての感想です

東京会場へ行ってきました。
記憶頼りで書いていきます。展示順ではなく、思い付いた順です。

どうもうまくまとまらないので、垂れ流し状態ですが(←表現が汚い)、よろしければお付き合いください。

2018.2月、展示の写真や公式サイトの情報をもとに追記しました。
(この色の部分)

「当たり前」の物がない中での文明

古代アンデスには、鉄の加工の技術がありませんでした。
だから、高度な石材加工をどうやって行っていたかが、なかなか想像ができません。
文字もないし、そんな中でどうやって巨大な建造物を作ったのか。

古代アンデスでは、カラル文化(紀元前3,000年~2,000年)の頃から、石造りの神殿が作られていました。(カラル遺跡)
これは古代エジプトの最初のピラミッドと同じくらいの時期だそうです。

石材を扱う技術は、ティワナク文化(紀元後500年~1,100年頃)が、特に長けていたそうです。

文字も鉄もあって当たり前のヨーロッパ人から見ると、これらなしで高度な文明が育ったとは信じられなくて、宇宙人説を本気で支持した学者もいたとか何とか。
 

あと車輪もないです。回転する構造が発明されてない。
だから土器なんかも、全部手ひねりなわけで。

現代人の常識では当たり前のあれこれがない、だけど確かに文明は栄えている。
アンデス文明展を見ていると、常識と想像力に挑戦されている気分になります。

それから、お金もなかったそうです。だから市場もないです。
標高が違う(=特産物も違う)集落を、リャマで行き来して物資を交換し、帝国全体として自給自足経済を動かしていたのだろう、と考えられているそうです。

キープについて

キープを読み書きできるようになるには、3年間、王立の学校に通って勉強するそうです。
立派な高等技術です。

この3年というのは、スペイン人が聞き取って記録したのかと思いますが。
だったらキープの読み方も記録すればよかったのにと思いましたが、そう簡単なことではなかったのでしょう。なにせ習得が3年がかり。

重要なものでしょうから、余所者、しかも皇帝を略奪するような相手に、簡単に読み方なんて教えられないよね、とも思います。

キープは、アンデス初の帝国といわれる「ワリ帝国」の時代に、すでに使われていたそうです。
ワリ文化(650~1,000年頃)のキープは5進法が主、インカ帝国(1,400年代前半~1572年)のキープは10進法、といった違いもあるそうです。

記録されている情報は、農作物や人口などの記録、帝国の歴史などがあるそうです。




宗教・生贄

古代アンデスは、多神教の世界です。
二元的な考えがありつつ、中心的な太陽神もいつつ、自然界や死者の国など色々なものごとを神様ととらえていました。
これは日本人としては親近感じゃないかと。

生贄文化は、砂漠や高地といった過酷な環境が背景にあるようです。
とくに砂漠は過酷。常に水が足りない! みたいな。
神様は人間の血を取り込んで力を得る、という信仰があったようで、壺にそんな絵が描かれたものも展示がありました。
 

展示ですごい印象強いのは、自分の首を切ってる宗教指導者さんだかの土器。自らを生贄として捧げる場面だろうか、との解説でした。
首のぱっくりが、引くほどリアルでした。

痛くないのかなあ、と思って仕方ないのです。
痛みとは警告であり、生命としての消滅につながるものであり、根源的な恐怖につながっていると思うので。
それを自分でやるっつーのが。武士の切腹も、人のこと言えませんが。

意思の力や、宗教的な高揚が上回るんでしょうかね。
それとも向こうだと、コカの葉をかんで開頭術の麻酔にできてたくらいですから、何か植物でも使って、そういうためらいも全部吹き飛ばしていたのかもしれません。
 

とはいえ、世界中他の地域でも、人柱の考え方はあります。
残酷さ(現代の感覚で)は、公開処刑なんかも負けてないと思います。捧げものと見せしめとでは、だいぶ目的は違いますが。

そう思うと、アンデスの生贄文化も、際立って特殊なものでは無いのかなあ、という気もするのです。
血は生命力の源である、って考えも、世界各地にありますしね。

首ぱっくりの土器は、クピニスケ文化(紀元前1,200~800年頃)のもの。

「神が血を欲している」的な絵は、カラル文化かチャビン文化のところにあったのが印象強いです。

生と死はひとつながり

アンデスでは死者は、死んだ後も死後の世界で生き続ける、みたいな考えだったようです。
死んだ家族のミイラ化したのを家の中に住まわせて、ご飯あげたり、生活道具を渡したりもしていたようで。
全員がそうだったのかは分かりませんが。

日本での、仏様にご飯を供えるのとは、感覚が違うようです。
死んだ人は、仏様みたいな存在になったわけではなくて、あくまでその人のままで、この世と同時並行で存在する世界で普通に暮らしてる、みたいな。

正しく解釈できてるか自信が足りないですが、こんな風に受け取りました。
死は特別な事じゃなくて、自然なことで、そんなに忌むべきものとは考えてなかったらしい、と。
今の日本の、死を恐れて遠ざけがち、死の間際まで医療漬けの場合が多い、といった現状を思うと、見習うべき感覚とも思いました。
 

それにしてもミイラと暮らしてたっていうのは、ちょっと衝撃ですが。
放っておいてもミイラ化するような環境なら、少なくとも感染症の元になるとかいうことはなさそうです。

ジャガーの頭

アンデスでは、蛇や猫など、神様やその使いとして神聖視された動物がいくつかありました。
中でもジャガーは神聖な動物で、これを象った石像が複数展示されています。

シャーマンがジャガーに変わっていく様子を追った石像が、実物2+映像2=合計4点すべて見られたりします。

この石像、何かに似てると思ったら、獅子舞の頭(かしら)に雰囲気が似てました。
獅子は空想の生き物ではありますが、ライオンとも考えられます。そうすると、どっちも猫科です。
ちょっとこじつけですが、親近感が湧きます。

ジャガーの頭部は、チャビン文化(紀元前1,300年~500年頃)の神殿外壁に取り付けられていたものです。
(チヤビン・デ・ワンタル遺跡)




土器がすごい

土器の造形が精巧で、目を見張るばかりでした。
展示ケースの横へ回って、土器の裏側まで覗き込んで見ちゃいました。彫刻めいた土器は、裏の造作も丁寧です。絵が描かれたものだと、裏側は彩色が違ったりします。

時代が下ると、段々大きいものも作られたり、文様が細かくなったり鮮やかになったりします。
地域によっても違います。
土器自体も形が洗練されていきます。
ロクロじゃないのが信じられないほど、均整が取れている壺もあります。
職人の腕が上がったんだろうと想像します。

西洋では大理石の人物像がたくさん見られますが、アンデスは実用的に見える土器で人物像を作る、という文化と感じ取れます。
発想の違いっぽくて面白いです。

土器はモチェ文化(紀元前200年~紀元後750/800年頃)のものが特に面白い! と展示されていました。
ナスカと同じ時期に、川の近くで発達した文明です。

トウモロコシの神様とか、ウミガメとかリャマとか、飾っておきたいようなかわいい土器も多かったです。

生きた証を残したい

土器を見ながら、生きた証しを残したい、というのは世界中どの時代もあるなあ、とも思いました。
ブログ書きもその一端だなあと。

文字がない分、こうやって土器とか作って残しています。
キープの役割はどのへんだったんでしょうね。実務的な記録だけだったのかしら。

ピラミッドだって、アンデスにも立派なのがあります。
神殿・宗教施設として使われていたと考えられています。
人間の根源的な発想とか欲求とかって、世界どこでもそんなに違わないのかなあと思えてきます。
根源的なものが、自然環境の特色によって分化していくのかなあ、と。

美術的な話

土器とか絵柄とか、なんかデザイン的でユーモラスなのが多いなあと思いました。
西洋ルネサンスのような写実的なのとは違っていますし、それより前の宗教画の硬い感じとも違います。

土器とか、精巧とはいえ、ある程度簡略化しないと作るのが難しいと思うので、特徴を捉えて簡略に表現する力に長けていたのかな、とも思いました。

中国とかヨーロッパとか日本には、写実的な陶磁器もあった気がしますが。
そこは文明の続いた長さの違いか、発想の違いなんだろうと思います。あと土の違いか。




開頭術について

古代アンデスは、鉄の加工が発明されなかったので、刃物も普及しなかったそうです。儀式用の、青銅製なんかの刃物が少しある程度。
だから戦争でも、切る武器ではなく、殴り付けるような武器がずっと使われていたそうです。

すると、頭部の打撲が致命的になり得ます。
打撲によって、頭蓋骨の内側に血腫ができたり、脳みそ自体がむくんだりする。
それを放っておくと、頭蓋内で脳みそが押されたりパンパンになって、脳みそとして働かなくなってしまい、死に至ります。

でも、速やかに頭蓋骨に穴を開けて、圧力を逃がしてやれば助かります。現代でも行われている治療法です。
古代アンデスの人々も、穴を開ければ助かるらしいということを、経験から学んでいったのでしょう。
神秘的な目的でも開けてたかもしれませんが。

開頭術が普及した要因として、
・乾燥した高地なので細菌が少なく、わりと衛生的に施術できた。
・コカの葉を噛む習慣があり、これを麻酔として用いることができた。
って事が言われているそうです。
 

詳しいことは、予習で見たサイトの方が勉強になりましたが、会場では実際の頭骸骨や、コカの葉入れ、戦争の武器など展示されていてイメージが膨らみました。

全てがインカに繋がる

様々な文明が栄えては滅び、そしてインカ帝国に至る、という事が、展示全体を通して見えた感じです。

前の文明で発明されたり発展した、様々な物や仕組みが、インカに生きている。
キープ、インカ道、建築技術、宗教関係・・・
一連の展示が、インカに収束するのが感じ取れました。
これが展覧会の最終回答か、とか思いました。

インカ道は、ワリ帝国の時代に整備されたものを拡充したそうですし、キープもワリ帝国が発達させたものを受け継いでいます。
巨大な石造りの建造物には、ティワナクの技術が活きています。
大きな帝国や、文化の流れができるには、それまでの積み重ねも重要なのだと思わされます。

やっぱり異質ではある

日本とアンデスは地理的にも遠いし、気候風土もかなり違います。
現代日本は欧米由来の文化がたくさん入っているので、文化的にも、馴染んだものとは完全に別です。
スペインが来るまで、アンデスは独立した文化をはぐくんでいましたからね。
アンデス文明に浸ると、頭が柔らかくなる気がします。

まずは想像してもらいたい。新幹線で2時間もかからない東京〜名古屋間ほどの距離に、海岸があり砂漠があり、そこから標高は一気にあがり富士山2個分・6000m級の山脈、それを越えるとアマゾン川へ続く熱帯地域がある光景を。
 ~中略~
アンデスの自然環境は、世界中にある生態系が全部見つかると言ってよいほど超複雑なのだ。こうした世界中に類を見ない自然環境のもと、独自の個性的な文明は発展した。
アンデスってなんです? コラム(第一回)より

メディアガイドについて

500円です。オーディオガイドって520円が多いので、若干のお得感が。
スマホとタブレットがありますが、スマホの方が首から掛けられるし重たくないのでオススメです。
借りるときに使い方を説明してくれました。

音声だけでなく、映像が見れたりクイズが付いてたりして面白かったです。
展示を見るのに疲れてきたら、隅に寄ってクイズやって気分転換してました。

展示品の説明は、書いてない事も教えてくれてお得感あります。
文化の中での位置付け、みたいな方向にも話が行くので、物と文化が結び付いて理解できます。




古代アンデス文明展 展覧会情報

鹿児島県歴史資料センター 黎明館(2019/7/26~9/16)

MBCテレビ開局60年記念 古代アンデス文明展 – 概要 より引用。(一部編集しています)
イベント情報は、この公式サイトをご覧ください。

開催期間: 2019/7/26(金) ~ 9/16(祝・月)
開館時間: 9:00~18:00(入館は17:30まで)(初日は10:00開館)
休館日: 7月29日(月)、8月5日(月)・19日(月)・26日(月)、9月2日(月)・9日(月)

【観覧料】

一般高校・大学生小・中学生未就学児
当日券1,400円1,000円700円無料
前売・
団体(20名以上)
1,200円800円500円

■前売り券販売プレイガイド
ファミリーマート(イープラス)、山形屋、チケットぴあ(Pコード769-691)、生協コープかごしま各店

会場:鹿児島県歴史資料センター黎明館(1階第1特別展示室)

終了した会場

東京会場(上野)

会場:国立科学博物館

会期:2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
休館日:毎週月曜日、12/28~1/1、1/9
  ※1/8(月)、2/12(月)は開館
開館時間:9:00~17:00
  (金曜日、土曜日、11/1、11/2は20:00まで)
  ※入場は各閉館時間の30分前まで

新潟会場

会場: 新潟県立万代島美術館

会期: 2018年03月21日(水) ~ 2018年05月06日(日)
開催時間: 10:00~18:00 ※観覧券の販売は17:30まで
休館日: 4月16日(月)

山梨会場

会場:山梨県立考古博物館(山梨県甲府市下曽根町923)

会期:平成30年5月19日(土曜日)~7月16日(月曜日・祝日)

休館日:毎週月曜日(祝日の場合はその翌日)
ただし、7月16日(月曜日・祝日)は開館いたします。

開館時間:午前9時~午後5時(入館の受付は午後4時30分までです)

仙台会場

会場:仙台市博物館

会期:2018年7月27日(金)~9月30日(日)
※毎週月曜日と9月18日(火)、25日(火)休館
ただし8月6日(月)、13日(月)、9月17日(月・祝)、24日(月・休)は開館

開館時間:9:00~16:45 (入館は16:15まで)

名古屋会場

会場:名古屋市博物館

会期:2018年10月6日(土)~12月2日(日)

休館日: 毎週月曜日・第4火曜日(祝日10/8(月)は開館、その直後の平日10/9(火)は休館)
10/9(火)、15(月)、22(月)、23(火)、29(月)、11/5(月)、12(月)、19(月)、26(月)、27(火)

開館時間: 9時30分~17時00分(入場は16時30分まで)

富山会場

会場:富山県民会館美術館

開催期間: 2018年12月21日(金) ー 2019年2月17日(日)
開館時間: 平日 9:00~16:30、土・日・祝 9:00~17:00 ※最終入場は閉館30分前
休館日: 2018年12月29日(土) ー 2019年1月3日(木)

大分県立美術館(2019/3/8~5/6)

会場:大分県立美術館 1階展示室A

日時: 2019年3月8日(金)~5月6日(月)10:00~19:00
※金・土曜日は20:00まで (入場は閉館の30分前まで)
※無休

静岡県立美術館(2019/5/18~7/15)

会場:静岡県立美術館

開催期間: 2019年5月18日(土)~7月15日(月・祝)
開館時間: 10:00~17:30(展示室の入室は17:00まで)
夜間開館: 7月6日(土)、7日(日)、13日(土)、14日(日)
10:00~19:00(展示室への入室は18:30まで)
休館日: 毎週月曜日(ただし、7月15日(月・祝)は開館)

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