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【まさに芸術】後藤由香子のひな人形に会ってきたので感想です【会期終了】

横浜人形の家で、2018年4月8日まで開催されていた「追悼特別企画 後藤由香子展」です。
 

ギリギリひな祭り前に行ってこれました。写真大量でお送りします。
横浜人形の家入口の展示

後藤由香子さんのおひな様は、やっぱり美しかったです。
そして、作者さんの人柄や、制作の裏側なんかも惜しみなく展示されていて、とても楽しめました。
 

ちなみに、特別展へ向かう途中、常設展には昔のお雛様が展示されてます。気分あげるのにどうぞ。
常設展のひな人形

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会場内の様子

まずはざっと雰囲気から。

入ってすぐのところ。様々なテーマのおひな様が並んでいます。
会場内1

結婚式をテーマにした一角も。
会場内3

裏方コーナー、色重ねの見本。
会場内2

職人さんの仕事紹介も。
会場内4

テディベアまで本格的な衣装を着ている・・・!
森のくまさん
「森のくまさん」2015年

展示はひな人形がメインですが、男の子の兜も、4点展示がありました。
これらもそれぞれに、テーマと願いがあります。
会場内5

やっぱ芸術だった

おひな様に戻りまして。
 

まず、会場を入って一作品目がこれですよ。
夜明けの浜辺で琴を奏でている風情の。
夜明けのシンフォニー
「夜明けのシンフォニー」2002年

やっぱりこれは、おひなさまの姿を借りた芸術だ、と、まずは感じました。
ちなみに着物の青い部分は、実物はもっと深くて鮮やかです。
 

昨年より、はるかにたくさんのおひな様が展示されています。

淡いのもビビッドなのも、ダークなのも・・・
小道具や重ねなども、それぞれに美しいんです。
さくら
「さくら」2003年

JAZZ
「JAZZ」2003年

織部
「織部」2002年
こちらは、イタリア・フィレンツェにある世界遺産、ヴェッキオ宮殿で展示されたそうです。
 

お顔立ちやお化粧も、作品によって少しずつ違うようです。
キリッとした表情だったり、唇が開いて柔らかな笑顔だったり。

テーマによっては、ヌーディーなお化粧だったり、アイラインばっちりだったり。
MANA
「MANA」2017年

GOTHIC
「GOTHIC」2015年

こんなに表現できるんだな、と驚かされます。
 

一番ロマンチックだと思ったのは、源氏物語です。
亡くなった紫の上が、馬に乗って源氏に会いにきて、一緒にお月見をしている、というイメージです。
源氏物語
「源氏物語」2016年

平安時代のような、髪を下ろしたおひな様。
美しいです。
 

あと印象強かったのはこちら。2011年、東日本大震災の後に作られた作品です。
Dreaming
「Dreaming」2011年

後藤由香子さんのお爺様(後藤人形の初代)は、戦後の何もない時代に、人形作りを始めたそうです。
着る物も、食べる物にも事欠くような状況で、どうして人形だったのか。
大震災が起きたあと、後藤由香子さんはそんなお爺様の事を思い出し、「心の復興」のためだったのではないか、と思ったそうです。

人形には人形の、出来ることがある。
ひときわ動きのあるおひな様から、そんな強い思いが伝わってくる気がしました。




映像シアター

3階企画展示室の、入口横の階段から、4階のシアターに上がれます。

シアターでは、12分間の映像が、繰り返し流されています。
ゴスロリモチーフのひな人形「GOTHIC」を用いたCM映像、おひな様の制作現場の映像、後藤由香子さんのインタビュー映像など。
入退場自由です。
GOTHIC
「GOTHIC」2015年

私は展示室→映像→もう一度展示室、と見て、映像の前後で作品への印象が変わったりして楽しめましたが、効率よく行くなら映像を先に見ると良いでしょう。
展示室にある解説より、幅広い内容を見聞きできます。

後藤由香子さんの背景(一部)

映像を見ながら、納得したことや共感したことがあったので、ネタバレ注意で書いてみます。
 

後藤由香子さん、すごくきれいな方なんです。
その上で見せ方も心得ていらっしゃる、というか。
昔は、民放でアナウンサーもされていたそうで、それで見られることに慣れている面があるのかな、と納得しました。

会場には、本人の写真も、あちこちに飾ってありました。
私は、作品+本人写真+背景情報で、バッチリ「芸術家・後藤由香子」のファンになってしまった感じです。
後藤由香子さん写真パネル
 

あと、10年ほど治療したけど子供に恵まれなかった、って話を、インタビューの中でちらりとされました。
こんな私がおひな様なんて作っていて良いのだろうか、と悩む事もあったけど、今はおひな様を子供のように思って作っていると。

それから、命が生まれて育っていくというのは、本当にかけがえのない事だと思うから、それを祝うためのおひなさまを作れる事は喜び、といったこともおっしゃっていました。
(ニュアンスが違ったらすみません)

私も不妊治療をしていて、「子供が生まれるのはすごいこと」と感じるので、すごい共感しました。

伝統は変わっていい、という考え方

1000年以上の歴史の中で、姿形を変えながら続いてきたひな祭り。
後藤由香子さんは「伝統とは、姿を変えて心を伝えるもの」と言います。
伝統だと思ってがんじがらめになるのではなく、時代ごとの感性によって、変わっていって良いのだと。

江戸時代には、黒いモダンな衣装が流行った事もあるそうです。
一般庶民が、7段飾りとかの豪華なおひな様を飾るようになったのは、明治~大正だったか、わりと最近の話です。
 

おひな様を贈る・飾るのは、根本的には、祖父母や両親が子(孫)を思う気持ち、だと思います。

伝統的には、幸せな結婚を願う気持ちが込められているようです。
だからおびなとめびなだし、嫁入り道具が一緒に飾られる事もあるのはそういうわけで。

こうした「願いを込める」を拡大して、可愛らしい女の子になってほしいと花をテーマにしたり、自由でおおらかにと願って斬新な色使いをしたり、力強く育っていけと夜明けを表現したり・・・
色々な願いを込めて、後藤由香子さんのおひな様は作られています。
(テーマに沿って作られたものもありますが)
妖精~ミモザ
「妖精~ミモザ」2015年
 

展示や解説を見ながら、私が大事に思っているおひなさまの姿は、伝統というよりは、祖父母の気持ちそのものなのかもしれない、と思えてきました。

昔ながらの、昭和っぽい、赤い衣装のおひな様。それが私にとって「おひなさま」だと感じます。
伝統的なしつらえだから、落ち着いて見られるのだと思っていましたが、そうではないのかもしれません。
両親や祖父母と楽しんだ、小さい頃の記憶と結び付いているから、落ち着くのかもしれません。
 

一方で、女の子それぞれに、大切なおひな様の姿があるかもしれません。
そして、時代や場所によって、その姿は変わって良いのかも。

様々な衣装のおひな様について、ちょっと腑に落ちた気がしました。




あとがき

後藤由香子展、眺めるだけでも本当に眼福だし、意外と色々考えてしまう展覧会でもありました。
 

また今回、フラッシュ無しなら撮影OK、個人ブログへのUPもOK、との事で、楽しんで色々撮りましたが、光の加減が難しくて仕方ないです。自主ボツ大量。

画像編集ソフトで光の調整もするんですが、どうひねっても実物にはかないません。
そもそも、かなうようなら、ご自由にどうぞとか言われるはずがありません。
 

なので、ご興味あれば、ぜひ本物を見に行ってくださいませ。

そんなところです。
 

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