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ヒアリの生態と駆除について~「とりあえず殺虫剤」では、外来種が増える!?

ヒアリ、あちこちの港に上陸してますね。横浜港では7/14に発見されたとの発表がありました。
報道を見るたびに、自分の周辺にはまだ来ないでしょって気持ちと、来たらどうすんだろって気持ちがモヤモヤしてました。

今回、ヒアリに対して一般人としてはどうするか? 何を知っておくべきか? と調べたので、2回に分けてまとめます。

まずはヒアリの特徴と現状です。

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ヒアリの生態・特徴(ざっくり)

・女王アリ、雄アリ、働きアリ(生殖能力を持たないメス)から成るコロニーを形成し、巣を作ります。(1)働きアリだけで巣を作って定着することはありません。(3)

・巣は蟻塚を形成し、農耕地や公園など、開放的な草地・裸地に多く見られます。直径25~60cm、高さ15~50cmのドーム状です。最大で高さ90cm、深さ180cmに達します。(2)

・ヒアリの大きさは2.5mm~6.0mmと幅があります。体は全体的に赤茶色、お尻に毒針があります(針は見えないこともあります)。(2)

・性格は非常に攻撃的です。(1)一匹が何回も刺したり、複数匹が体に上ってきてみんなで刺すこともあります。(3)

・女王アリは交尾しながら飛び、新たな場所に舞い降りて産卵、そこで新たなコロニー形成を始めます。(1)

(カッコ番号は記事末尾の参考資料です)

 

環境省が公開している写真を見ると、なかなか均整の取れた体つきに見えます。在来の似た色のアリには、頭だけが極端に大きい奴もいるそうですが、そんなバランスではないです。
とはいえ、基本的には在来のアリとよく似ていて、素人がパッと見分けられるものじゃないそうです。

黒っぽいお尻(正確には腹部)の部分に針があるそうです↓
ヒアリ(環境省HPより)
ヒアリ(Solenopsis invicta)の国内初確認について|環境省より

巣が出来ちゃうと分かりやすいですが(在来のアリで、大きな蟻塚を作るものはいないそう)、そんなもん出来てほしくないですねぇ。

日本に定着する恐れはあるのか? するとしたら時期は?

日本生態学会のHPに、以下のことが書かれています。

ヒアリのコロニー形成および分散には半年から数年間を要すると言われている

一般的にヒアリの有翅虫は約2km移動すると想定されていますが(State of Queensland 2016)、女王の形態には多型があり、分散可能距離も0.5~3.4kmと幅があるといわれています(Helms & Godfrey 2016)。代謝コストからの推定では無風条件で約5 km以内が限界と考えられていますが(Vogt et al. 2000)、最大の拡散速度で48 km/年との報告もあります(Hung & Vinson 1978)。トラックや鉄道等による移動、風などによる長距離移動も想定しなければなりません。

(4)・・・1.発見初期段階における徹底的な防除と継続的なモニタリングの実施

翅蟻(羽が生えていて飛ぶアリ)が出現して、自力で急速に広まるには、半年~数年かかる、と。
ということは、万一定着するとしても、確実に今から半年は先です。(2018年以降。徹底防除してくれているのでもっと遅いだろうと期待)

翅蟻の拡散速度も、報告されている中では、最大でも48 km/年とのこと。感染症なんかと比べたら、それほどの勢いではないように感じます。
ただ、車にくっついたりして簡単に移動できちゃう世の中でもあるので、意外に離れたところへ拡散する可能性もあります。
 

ともあれ現状としては、コロニー(≒巣)を形成する前に早期発見・駆除! と関連の組織が頑張ってくれてる状況です。
前項で引用した通り、働きアリだけでは巣は出来ないので、少数が歩き回っている程度の段階で駆除してしまおう、というわけです。

駆除した後も、見えないところで増えようとしていないか、定期的に検査をするようです。(餌や誘引剤でおびき出して調べる)
女王アリが発生しなければ、水際での食い止めは成功しているといえます。

怖がって在来のアリまで駆除すると大変なことに?

再び日本生態学会のHPより。

最近の研究では、在来アリの存在によってヒアリの初期コロニーの定着や生存率を著しく低下させることが報告されています(Tschinkel & King 2017)。

問題の根源である国外からの持ち込み対策が不十分なまま、ベイト剤を広域的に使用すれば、在来種のアリや捕食者となる節足動物を駆逐することになり、ヒアリ類や各種害虫の大量発生を引き起こす恐れもあります。

ヒアリ類がこれまで発見されていない地域では、まずは誘引剤を添付したトラップを用いてモニタリングし(誘引剤を使うと1日以内の設置でよい)、もし発見された場合にのみベイト剤を用いて防除することを推奨します。
(4)・・・2−2. ヒアリ類の侵入が疑われる場所でのモニタリングの継続実施

勢い余って、近所のいつものアリや昆虫まで殺してしまうと、いざヒアリが来た時に戦ってくれる虫がいなくなります。すると簡単にヒアリが住み着いてしまう、ということです。

外来種に対して在来種は防波堤になるんですね。

在来アリ(富山で撮影)
(実家の近所を歩いてたやつ↑)

まとめ

以上のようなわけで、一般人は今からそんなにおびえなくてよろしい、ただし大きい貿易港によっぽど近い人は注意しとくか、って程度かと。

また、万一怪しいアリを見つけたら、自治体や環境省の窓口へ通報することが重要です。
危ないからってこと以上に、どこに出たかを役所で把握し、効果的な駆除計画に役立てないといけないから。
そして、間違って在来種を駆除して減らしてしまうと、かえってヒアリを住み着かせることにつながるからです。

神奈川県ならここへ↓

【神奈川県】ヒアリ専用コールセンターについて~伝えるべき情報・注意点
神奈川県がコールセンターを開設したそうなので、メモっときます。 怪しいアリを見つけた時は、ここへ通報しましょう。 ヒアリ専用コールセンター(・・・

余談:将来のために、駆除剤の話

私たち一般人がヒアリを駆除するのは、家の庭にアリ塚が出来たとか、日常的に刺される人が出るとか、それくらい身近になってしまったとき、だと思います。
今は知識として知っていれば十二分。本当に使う事態になったら、その時にはもっと使い勝手の良い方法が開発されてるかもしれませんしね。

一応駆除剤の事を引用しますが(1より)、出番はまだまだ先なのかなって感じです。

1:目の前に見えている虫体を殺す(例:アリアースW、アリアースジェット)
一般的な殺虫剤が有効。即効性がありますが、目の前に見える虫体にのみ有効で、巣にいる大部分には効かず限界があります。

2:忌避剤を使い、一定範囲から出てこないようにする(例:アリアース粉剤)
巣穴の周囲や花壇の周りなどに忌避剤(粒剤、粉剤)を撒いてその範囲から出てこないようにします。

3:ベイト剤を使い、巣穴に持ち帰らせて全滅させる(例:アリの巣コロリ)
ベイト剤(遅効性の毒餌)を設置し、働きアリに持って帰らせます。巣の中で食べて全滅。遅効性(食べてすぐ死ぬ即効性では、他のアリが警戒して食べなくなるのであえて遅効性にしてあるとのことです)のため、効果発現まで日間以上の時間を要しますが、見えない虫体まで含めて徹底的な駆除が可能です。

できれば出番が来ないでほしいものです。
 

参考資料
1:勝田吉彰「ヒアリの上陸に備えて医師が知っておきたい基礎知識」日本医事新報2017.7.29号(No.4866)P18-20
2:ストップ・ザ・ヒアリ(PDF)|環境省
3:「ヒアリ」の疑問を専門家が答える…覚えておきたい合言葉は“ひありおくやみ” |ホウドウキョク
4:特定外来生物のヒアリ類に対する緊急的および継続的な対策に関する要望書|日本生態学会

おまけ
ヒアリの図解を描いてらっしゃる方を見つけました。情報が正確なうえに分かりやすくて、笑いまで取ってるという素敵ぶりです。

ヒアリ・インベーダー・オン・ファイア - 沼の見える街
招かれざる毒アリさん「ヒアリ」の図解です。危険なアリには間違いないのですが、ヒアリを恐れるあまり無闇な混乱が起こってはいけませんので、基本的な生態を図解でまとめておきました。(高度な社会的スキルなど、非常に興味深い生態をもつ昆虫でもあるんですけどね…。)イラストのあとに、この図解を描くにあたって参考にした、信頼性の高そ・・・

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