カラヴァッジョは、16世紀末~17世紀始めに活躍した、イタリアの画家です。
ルネサンスの直後くらいに現れて、光と影の劇的な表現や、写実的な描写、構図の斬新さで、後世に大きな影響を残したすごい画家。
本人は、暴力事件など起こしては逃げ回り、しまいには殺人罪で死刑宣告まで受けた無法者。
そんな色々と刺激の強い方です。
フェルメールも、特に初期の作品で、直接・間接にこの人の作品を参考にしています。
彼の光遣いが上手いのは、カラヴァッジョの影響もあるのです。どの程度かは分かりませんけど。
光が上手い以外にも、弟子いない、寡作、若くして亡くなっている(フェルメール40代/カラヴァッジョ30代)、など、意外と共通点があります。
2018年フェルメール展では、冒頭の「神話画・宗教画」の章に、カラヴァッジョも描いている題材がちらほらありました。(本人の作品は来ていません)
それを見てたら、「カラヴァッジョの方がすごいじゃん(主観)」が止まらなくなってきたので、記憶を中心に書いてみます。
この人の記事、一度書きたかったんです。
では、フェルメール展関連(と勝手に決めた)作品と、私が好きなだけの作品、とりまぜて5点紹介します。
刺激弱めの絵からいきます。
情報源:
2016年カラヴァッジョ展(国立西洋美術館)の記憶
2016年にローマ旅行に行った記憶
もっと知りたいカラヴァッジョ―生涯と作品 宮下 規久朗/東京美術 2009年
下記のウィキペディア
画像出典:
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ – Wikipedia
ナルキッソス – Wikipedia
旅行先で私が撮った写真
聖マタイの召命
「マタイによる福音書」より、キリストが、徴税人のマタイを「私に従いなさい」と呼ぶ場面。
フェルメール展に、この絵から影響を受けた絵が来てますが、比べてしまうとコントラストが甘いのですよ。
光と影の付け方が、ほんとすごい。画像では潰れて見えちゃうのが残念です。
この絵は教会の祭壇画ですが(サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会)、現地では絵の中と同じ方向から、実際の光が注ぎます。
そんな計算もされてるのです。
ナルキッソス
カラヴァッジョ展に来てたのを見て、やべえと思ったやつ。
題材は、ギリシャ神話です。
美少年ナルキッソスが、神を侮辱して怒りを買い、自分にしか恋できないという罰を受けた。
彼は水面に映った自分の姿に見とれて、水辺から離れられなくなり、そのまま水仙になってしまった・・・
という話。
この、何ともいえないエロス! 吸い込まれそうです。
実物は、けっこう大きい絵で(「マルタとマリアの家のキリスト」より一回り小さいくらいか)、少年がもっと美しく浮き上がって見えます。
題材としては、水仙とか女神とか、色々と要素があるんですが、カラヴァッジョは全部省略してます。
こういった、要素の削ぎ落としぶりは、フェルメールとも通じると思います。
ロレートの聖母
大好きな絵です。神々しい!
手前の巡礼者の、きたない足の裏を描いちゃうところが、当時は画期的だったとか。
これも、「マタイの召命」と同じく祭壇画です。(サンタゴスティーノ教会)
巡礼の旅をして教会にたどり着いた人が、絵の中の巡礼者に自らを重ね合わせ、聖母子が現れる奇跡を疑似体験する、という効果を狙っています。
上手いです。
ダヴィデとゴリアテ
ここから人が死ぬ系なので注意を。
まずは私が好きなだけの絵です。(好きというと誤解を招くが)
旧約聖書より、巨人ゴリアテを倒した、勇敢な若者ダヴィデ。
彼は、ヒーロー的な描かれ方をする事が多いそうです。
戦ってる最中を描いたり、首を取った得意げな顔を強調したり。
で、ゴリアテの首はというと、目立たない隅っこに描いてたり、画面から見切れてたりします。
そんなダヴィデを、こんな顔させるとか。首も結構目立ってるし。
勇者は綺麗事だけではつとまらない、と現実的な面を見せつけるようなのです。
フェルメール作品には決してないやつです。
これはカラヴァッジョ最晩年の作品で、ゴリアテの首は、画家本人の自画像だそうです。
罪人へ恩赦を与える権利を持つ、ボルゲーゼ枢機卿への、手土産にするため描いたと言われています。(事件を起こしてローマを追放されていたので、恩赦を願い出ようとしていた)
という裏のある絵ですが、それにしたってこの表現はすごいと思うのです。
ユディトとホロフェルネス
最後にひときわキツいの行きます。フェルメール展関連です。(と勝手に決める)
従者を連れて敵国の陣中へ乗り込み、大将ホロフェルネスが酔いつぶれたところを狙って、まさに首を取らんとする、美しき未亡人ユディト。
これは無法者にしか描けない生々しさではなかろうか、とか思っちゃう。
フェルメール展には、この直前の場面の絵が来てますが。(画家は違います)
そちらも美しいですが、生々しさでは言うに及ばず、、です。
あとがき
というわけで。
フェルメールと光の印象が全く違い、絵の雰囲気も全く違う、
だけど意外な共通点もある、カラヴァッジョ絵画。
ほんの一部ですが、紹介でした。
参考書です
こちらの本には、カラヴァッジョのほぼ全ての作品が取り上げられていて、読みごたえがあります。
オールカラーで、当記事に引用した画像よりは、だいぶ絵が見やすいです。
また、カラヴァッジョ本人の無法者ぶりや、意外と小心な部分なんかも、たくさん紹介されていて興味深いです。
すごい人だけど、友達にはなりたくない・・・!
そんなところで、終わります。
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